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とある輸入商店主から見た「円安」。

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選挙が近付くにつれて、「円安だから景気ガー」とか「円安だから雇用ガー」とかいう声が、主に安倍政権に対抗する側の勢力からよく聞こえてくると思います。率直に言って「(アベノミクス以降の)円安が日本経済に悪影響を与える」という論旨は、極めて短絡的で次元の低い、大衆扇動的な理屈です。

仮にも前政権与党を担った実力のある国会議員様たちや、有名大学を出て強力なコネで入社した大手マスコミの優秀な社員様たちが本気でそう信じているとは思いませんが、単に安倍政権を貶めるためだけに、無垢な民を陥れようとするのは座視できません。一般的に「円安」に不利とされる「輸入商店」から見た「円安」について、ちょっと書きたいなと思った次第です。

1、「円高」、「円安」の定義

言うまでもなく「円安」というのはある時点の為替レートと比較して、高いか安いかを言っているだけなので、瞬間的に10銭動いたって「さっきより円安」と言えますし、「昨日より円高」、「先週より円安」、「先月より円高」、「去年より円安」というだけのことです。第2次安倍政権は2012年12月に発足したわけですが、確かにそれ以降、猛烈な勢いで為替レートは120円まで「戻して」きました。しかしそれ以前はどうだったんでしょう。

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出典:Yahoo! Finance

ヤフーファイナンスのドル円10年チャートを政権別に色分けしてみました。大まかにブルーが円安政権、ピンクが円高政権という感じに分けることができそうですが、どうでしょう。歴代総理の顔を思い浮かべてみますと、ピンクの円高期には、「のび太」こと福田、日韓トンネル推進派であるにも関わらず人気のあった「俺たちの」麻生、「宇宙人」鳩山、311で大立ち空回りした菅、そして最後に男を見せた野田と、日本人から見ると、中国や韓国の方ばかり向いていた(ように思える)政権が並びます。

面白そうなので、試しに同じタームの日経平均の10年チャートを重ねてみたところ、、、完全に一致www
これで為替レートと日経平均株価、政権の売国指数の3つは連動してるのではないかという推論が成り立ちます。株価が高けりゃいいのかよ?という話はあるかもしれませんが、まあ安いよりは高い方がいいでしょう。日本経済は苦難の5年をなんとか乗り越えたというところです。ちなみに2つのチャートを掛け合わせたドルベースでの日経平均を見ると、チャートはもう少し緩やかになります。

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出典:Yahoo! Finance

別に中国様から「おい、俺たちの輸出が伸びねーだろ。円上げろや、こら。」と厳命されて、「ははーっ」とばかりに、直接為替レートを操作したというわけではないわけですが、日銀や金融市場が政権を「見る」ということはあるわけです。政権の色合いが為替レートに影響したという側面は十分すぎるほどあるでしょう。

一方で、円安期は小泉、安倍と(日本人に)とても人気のあった総理です。上で「昨日より円高」、「先週より円安」と書きましたが、安倍政権からするとほぼ120円前後というのは水準で、「円安?前と同じレンジに戻しただけですが、何か。」てな感じで、85年のプラザ合意以降、1ドル=120円前後というのはほぼ水準値と言っていいと思います。

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出典:BUSINESS INSIDER

2、輸出は売上の全て、輸入は仕入れの一部

さて、いよいよ輸入商としてのお話。詳細については弊社の利益構成にも関わってきますので割愛(隠蔽)しますが、ここでは一般論で説明したいと思います。
1個=1ドル=80円で買ってきて、100円で売りますと儲けは20円になりますね。これが突如1ドル=120円になりますと、そのまま100円で売っていては20円の赤字になってしまいます。輸入業者としては痛い。このまま続けていては赤字続きで倒産だ。(←イマココ)ということで商品の値段を140円にします。値上げだ!生活が苦しくなる!というのが、円安による悪影響で扇動するモデルです。

ところが、実際には、80円で買ってきて100円で売られているということは、あまりありません。輸入商が80円で買ってきて、1次卸に100円で卸したら、1次卸は2次卸に120円で卸して、2次卸は3次卸に140円で卸して、、、というようなことは間々あります。つまり、80円で輸入されたモノは店頭で160円くらいで売られていることが多いわけです。
そうなると、同じ「輸入原価が40円上がった」というケースでも、100円のモノが140円になるというストーリーでは40%もの値上げになりますが、160円のモノが40円値上げになるという話では25%の値上げです。つまり現実的な影響はもっと小さい。また加工業における材料や部品の輸入ともなれば、最終製品価格に占める輸入原価の割合はもっと低減することでしょう。

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上は最終製品をそのまま輸入してきて、一次流通として小売店に直接卸すというような単純化したモデルですが、あくまで概念としてはこんな感じです。
輸入製品に対して、為替レートが10%(10%という変動は相当大きな変動ですが)上がっても、連動して上がるコストは輸入原価 (海外から買ってくる値段です)と国際間輸送コスト(通常外貨建てです)くらいのもので、製品コストの他の部分、国内運賃や保管費、人件費、広告費などの販売管理費は当然ながら円で支払われますので影響を受けません。つまり小売価格に対する影響はほんの数%に過ぎないわけですね。国際間取引を行う上で、「輸入」は輸入業者のコストの一部でしかないのです。

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一方で、「輸出」は輸出業者の売上、つまり収入の全てです。為替の影響を全体に受けますから、1ドル=100円で輸出した場合100円の売上ですが、1ドル=80円では80円の売上になります。20%の為替変動が、そのまま売上の20%に相当するわけで、輸出額1兆円の企業が8000円億円になったり、1兆2000億円になったりするわけです。
乱暴な言い方をすれば、輸出業における為替損益は、常に利益変動要因のトップにあげられるくらい、良きにつけ悪しきにつけ、直接的で甚大な影響を及ぼします。これは商社やメーカーの輸出セクションにいれば、常識ですね。社長賞を取った部門の利益内訳と言えば、ほとんど為替差益だった、みたいな。

もちろんこれらはとっても単純化したモデルで考えているわけですが、考え方としてはそういうことです。為替が1円動いても、輸入業にとってはあまり大したことがありませんが、輸出業にとっては、非常に大きい意味を持つわけです。増してやそれが30円も40円も動いてみなさいよ、あなた。

上の10年チャートで、いかに、いかにこの5年間で日本経済が致命的な打撃を受けてきたかが分かると思います。そりゃソニーもシャープも傾くし、工場も出て行くわなという感じ。一方で中国経済は引き続き輸出を謳歌して、三星電子は絶頂を迎えていたわけです。

3、なんのために円安にするのか

「円安になったが企業収益は改善してないじゃないか」、「アベノミクス無能」、選挙前にこんなことを言ってるのは○カと○カくらいだろうとは言いませんが、一体誰が言ってるんでしょうね。1ドル=120円前後だった為替レートが、急激に80円を切って、輸出産業が立ち行くわけがありません。工場はみんな海外に出ていきました。もっと長い目で見れば、プラザ合意以降、日本経済は内需を拡大して、輸出比率を低減してきて、長い時間をかけて円高不況を乗り越えるための対策を取ってきたわけです。それが去年から超絶円安に振れたから、早速今年に高収益が得られるか。得られるわけがありませんね。
確かに急激な円安は一時的には輸入コストが増大したり、経済や業績が混乱することはあるでしょう。しかし政策の目的はそこじゃあない。

問題は円高が続いたことによって、工場が出ていき、熟練の職人さんがいなくなって、高卒の求人が減って、町に活気がなくなって、というところだったはずです。今年の企業業績を上げるためじゃない。為替が円安に戻ってくることで、地方の工場の社長さんが、「よっしゃ!来年は国内に工場戻すで~。地元の工業高校に求人出さな!」という流れが出てくることが、引いては地方再生、日本のモノ作り再生につながるはず、というストーリーです。
為替の先安観が見えてきて、工場を戻すという決断をし、準備をして稼働させて輸出を再開するまでには、少なくとも数年はかかることでしょう。つまり、アベノミクスで円安に振ってから、果実を得るまでに数年はかかる政策であることは自明です。

経済が高度化すればサービス産業の比率が高まって云々言った時代もありましたが、ロシア人やポーランド人だらけになったシティを、ローカルのイギリス人はどう思って眺めてきたのかな。長い間英国人の誇りであったローバーやジャガーも今やインド資本です。やはり国の経済の基盤を底上げするためには、地方経済、ローカルの産業力というのはとても大切なんじゃないかと思います。
僕自身は輸入業をやっていて、こういうのもなんですが、確かに多少の利益は圧迫されるわけですが、それで1つでも多くの工場が戻ってきて、100万円でも儲かって、1人でも新卒の求人が増えたり、リストラが減ったりすればいいなと思うわけです。

もちろん円が安ければ安いほどいいというわけじゃありません。適正値で安定的であることが一番です。僕的にはここらで1/100デノミして、1ドル=1円=1ユーロにした方がいいんじゃないかと、10年くらい前から思ってるわけですが、近年はデノミ論もあまり聞こえてきませんね。
ということで、1ドル=120円は特に円安というわけでもありませんし、ここ30年くらいずっと120円前後だったし、円安に振れることで、先々日本でモノ作りした方が得だな、と企業経営者らが考えるようになることは、とってもいいことだと思うのです。

ということで、5月以来のブログを勢いで書いてしまいましたが、気が付けばもう12月。3本目にして今年最後のブログとなってしまうのでしょうか。(笑)
みなさま、良いお年を~(^^ノノ

 

 

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