ユニクロのあんパン。

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先日、深夜の徘徊ならぬ早朝のジョギング(散歩ともいう)をしていたところ、駅前でなにやら人がちらほらと列をなしている。見上げればユニクロ。ふーん。通り過ぎようとしましたが、チラシを配っていたユニクロのお兄さんが「もうすぐあんパン配りますんで!」というので一瞬迷いましたが、「初日の早朝のみフリースとパンツが980円!」とな。とりあえず並んでみることにしましたw
上の画像はその時配られた「あんパン」ですが、裏に製造者「フジパン」とありました。焼きめのないフワフワとしたやわらかい白パンに、あんこと生クリームの入った生クリームあんパン。こりゃいわゆる「あんパン」ではありませんな。ゴージャスすぎる。

さすがに「あんパン」欲しさに、朝も早よから電車乗ってきて並ぶ人もいないと思いますが、やっぱりユニクロのあんパンは有名ですから、もらったらもらったで「おお、これが例のあんパンか」と誰もが一度は思うことでしょう。それくらい、ユニクロのセール初日の風物詩というか名物になっています。
このユニクロのあんパン。おそらくは配ってる店員さんも、もらう側のお客さんも「お客さんへのサービス」と捉えてるように思いますが、もちろんそういう意味合いもあるんでしょうけれど、僕はこれ、柳井さんはこれを社員に配らせることで、創業時の精神を伝えていく、社員教育の一環というか、社内統合を図るためにも、重視しておられるんじゃないかと思いました。

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「初心忘るべからず」とか「初志貫徹」という言葉がある通り、初心というのは忘れられやすく、貫徹しづらいものです。どこの会社でも大きく成長すると、創業時の苦労を知らないホンワカ社員がマジョリティとなって、それが引いては会社としての驕りや慢心につながります。柳井さんもここのところ、ことあるごとに、社内の危機感を煽って、社員を引き締めるような発言を良くされているようですね。
「創業神話」、いわゆる「レジェンド」というものは、対外的にはブランドの説明に使われたりしますが、社内的には一体感を醸成して、ガバナンスを強化するのに役立ちます。

大きく成功した企業にとって、「創業神話」は対照的に、より惨めであったり、苦労の連続であったりする方がギャップが大きくてドラマティックというものです。おそらく柳井さんはこの「あんパン」を、アップルやヒューレット・パッカードの「栄光のガレージ」と同様、創業のシンボルとして捉えてるんじゃないかと妄想しますが、それにしては片手落ちだなと思うのはこのパッケージ。
1号店オープンの日、配ったのは「あんパン」と「牛乳」だったようですが、セールで配っていたのは専用パッケージの「生クリームあんパン」に「お茶」。「うちの会社、セールの日は特注であんパン作らせてるぜ」では逆効果というものでしょう。ちょっと柳井さんの本からその時の様子を引用してみます。

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1984年(昭和59年)6月2日土曜日、朝6時。広島県中区袋町で「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」という名称のカジュアルウェア小売店をオープンした。梅雨空の合間で、朝から良く晴れていた。(中略) テレビやラジオでの宣伝、商店街や学校近郊での開店チラシ配りが功を奏して、早朝にもかかわらず、開店前からお客様の行列ができた。
時間を追うごとに行列は圧倒的な群衆にふくれあがり恐怖を感じるほどだった。店内に入っていただくのに整列と入場制限を何回もお願いすることになるほどの熱狂ぶりだった。この混雑は翌日の日曜日まで続いた。(中略) 初日に店内の混雑ぶりを地元のラジオ局が報道してくれ、ぼくはそのインタビューに対し「申し訳ないが、今から並んでいただいても入れないかもしれないので、来ないで欲しい」と、前代未聞の受け答えをすることになった。これが現在の「ユニクロ」の原点である。「一勝九敗」柳井正(2003)

 ものすごい大成功の滑り出しという感じで、あんパンというイメージではありませんが、どうせレジェンド化するなら、多少の演出はあってもいい。やはりここは、代々木の文明軒みたいな素朴な感じのあんパンと牛乳を、茶色の無地の紙袋に入れて配ったらいいと思うなあ。
一兆円企業になったからこそ、ここはやはり社員総出で、手作りな空気を作ったら良いと思うんですが、どうでしょうか。というか僕ならそうするなあ。それでも150年を超える歴史を持ちながら、いや長い歴史を持つが故に、既に創業神話を失ってしまった企業もある中、創業者がまだ存命で、現役で、積極的にレジェンドを保存しようとしている点は好感が持てます。

そもそも、会社に限らず、成功した人物や企業の下積み時代の苦労話というものは、後進にとって魅力的なストーリーに聞こえるものです。若気の至りや失敗談の1つも、面白おかしく語れない上司なんて、どこか薄っぺらくて面白味のない感じがするものです。よね?
スタートアップで巨額のマネタイズに成功したベンチャーが、特段金の使い道もなく、知名度も歴史もないが故に、人材確保の為と言いながら、都会のオシャンティな高層ビルに入ったりすることがありますが、あんなの金のムダとしか思えませんなあ。「オフィスがおしゃれだから」なんて理由で入ってくる新人さんと、一緒に夢が追えるものでしょうか。ベンチャーにはガレージや四畳半こそふさわしい。

そういう意味で、今は、将来ビザインが大いなる飛躍を遂げた時のための、苦労話や失敗談を日々こしらえている真っ只中にいるわけですが、3年でレギュラーになってゴールを決める日を夢見ながら、玉拾いと声出しばかりやらされている1年坊主のような日々は、そりゃ面白くもないことも多い。でも1年なくして3年はない。そして、下積み時代の苦労話こそが、後の美しき神田川の思い出となっていくものでしょう。
運良く1年生からレギュラーになったりすることもありますが、果たしてそれは運が良かったと言えるのかどうか。若くしてピークを迎えてしまうと、往々にして「カイエン欲しい」とかいう話になってしまいがちです。そういう慢心に陥らぬよう、ベンチャーは四畳半であんパンを食べることが重要だと思うのです。

あれ。

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